βラクタム系抗菌薬を使えるようになりたい(前編)

大丈夫?CNの記事だよ?
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どーも、CNです。
お久しぶりです。仕事に慣れるのが精いっぱいで更新が遅れてしまいました。

研修医になって難しいなと感じたのは抗菌薬の使い方。
名前もさることながら種類があり過ぎだしそれに加えて用量とか調節しないといけないしで頭が混乱してしまいます。

しかし様々な患者さんのカルテを眺めていると同じ種類の抗菌薬が使われているなーと分かってきました。

病棟で見かける抗菌薬の6,7割がβラクタム系でその使い方さえ覚えてしまえば取りあえず抗菌薬の扱い方が分かるようになるんじゃないかと思いました。

そんなわけで今回はβラクタム系抗菌薬のことについてまとめてみます。
(その他の抗菌薬についてはまたの機会にまとめたいと思います)

※2018/1/4追記
2年間の研修で得た知識からすると、以前の記事はかなりの偏りや間違いが含まれていましたので、大幅に加筆・修正しています。

ちょっと物騒ですが、抗菌薬を銃火器に例えてみました。イメージが付きやすくなると思います。

抗菌薬開発の流れ

最初に開発された抗菌薬はペニシリンです。

ペニシリンはグラム陽性球菌(以下GPC)にかなり効きました。
当然、抗生剤がペニシリンしか無かった時代に多用されましたが、グラム陰性桿菌(以下GNR)には効かないという弱点が発覚します。

さらに多用された結果ペニシリン分解酵素である、ペニシリナーゼを産生する菌が出現し、耐性を持つようになりました。

そこでペニシリンを改良してペニシリナーゼに分解されにくい薬やペニシリナーゼン阻害薬を混ぜた薬、GNRにも効くような薬が開発されていったという歴史があります。

ペニシリン系

というわけでまずは抗生剤の原点であるペニシリン系から簡単にまとめます。

ペニシリンの特徴は何と言ってもGPCに良く効くことです。
しかしどんなGPCにも効くわけではありません。

メチシリン感受性ブドウ球菌(以下MSSA)に対しては、ほぼ全てが耐性を獲得してしまったので効かなくなってしまいました。

ペニシリンのその他の長所として、かなりキレが良いことが挙げられます。
効果のある菌、および感染症に対しては投与したその日に解熱なんてこともあります。

さらにペニシリンを改良したアンピシリンやピペラシリンは一部のGNRにも効果が期待できます。

長所短所
・GPCに良く効く
・効く菌にはキレが良い
・改良によって一部のGNRにも効くようになった
・耐性の獲得によりMSSAにはほぼ無効
・βラクタマーゼ産生菌には無効
・クレブシエラには無効(自然耐性)
・時間依存性であり頻回投与が必要

PCG(ペニシリンG):バイシリン®:300~400万単位×6回/day

A群連鎖球菌(Group A Streptococcus:GAS)に対して感受性は100%です。

さらに梅毒に対しては第一選択であり、特に神経梅毒に対してはペニシリンG以外に有効な代替薬がありません。

肺炎球菌に対しては大量投与で効きます。

特定の菌に対して狙い撃ちするように使います。
さながらスナイパーライフルのようです。

ABPC(アンピシリン):ビクシリン®:2g×4回/day

腸球菌とリステリアの1stチョイスです!
MSSAを除くGPC、感受性ありのインフルエンザ桿菌、モラキセラにも使用できます。

※2016/9/14追記
厳密には腸球菌はE.faecalisとE.faeciumの二つが存在するのですがこのうちE.faeciumではアンピシリン耐性となっているためバンコマイシンが第一選択になります。(ただしバンコマイシン耐性でない場合ですが)。

病棟で腸球菌のfaecalisかfaeciumかを判別するまで時間がかかるためとりあえずの抗菌効果を狙ってアンピシリンを投与する場合が多く、そういう意味で腸球菌の第一選択となっているようです。

イメージとしてはライフルが合うでしょうか。

ABPC/SBT(アンピシリン・スルバクタム):ユナシン®:1.5~3g×4回/day

アンピシリンに加えてβラクタマーゼ阻害薬を配合したものです。

アンピシリンのスペクトラムに加えて、βラクタマーゼ産生菌や嫌気性菌にも有効です。
βラクタマーゼ産生菌というと、MSSA、大腸菌、クレブシエラの3つが有名ですが、しっかりカバーしています。

アンピシリンで市中肺炎の起因菌である、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌をカバー。
更に誤嚥性肺炎の原因菌になる嫌気性菌もカバーしています。

効果があるのは肺炎だけではありません。

大腸菌と嫌気性菌をカバーしているので胆道感染症や虫垂炎などの腹部感染症、尿路感染症、皮膚軟部組織の感染症などありとあらゆる代表的な感染症に幅広く対応できます。

ということで今回紹介する抗生剤の中では恐らく1.2を争う使いやすさで、エンピリック治療としてもかなり用いられるので病棟で目にする機会も多いでしょう。

イメージ的にはアサルトライフルがぴったりですね。

PIPC/TAZ(ピペラシリン・タゾバクタム):ゾシン®:4.5g×4回/day

ユナシンのスペクトラムに緑膿菌を加えたものがゾシンです。

Extended Spectrum β-Lactamase(ESBL:基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生菌の一部にも効果が期待できます。

非常に幅広いスペクトラムを持っていますので、外すと致命的な場面の重症感染症や医療関連感染、免疫不全のある患者かつ緑膿菌を想定する状況で使用します。

逆に緑膿菌やESBL産生菌の考慮がない状況下での使用はABPC/SBTを使えばいいので意味がありません。

イメージ的にはアサルトライフル+アドオン式グレネードランチャーといったところでしょうか。

セフェム系

ペニシリンと同じくβラクタム環を持ちますが、ペニシリンには効かない菌に対しても効果が発揮されるよう開発されました。

開発順に沿って第1世代から第4世代まであります。
世代を経るごとにGNRに強くなります。

世代ごとの違い
グラム陽性菌に強い←第1世代ー第2世代ー第3世代→グラム陰性菌に強い
第4世代は第1世代+第3世代というイメージ

非常に優秀な薬のように見えますし、実際その通りですが、欠点もあります。

腸球菌のペニシリン結合タンパク質には親和性低いため、全ての世代で腸球菌には無効なことには注意が必要です。

第1世代:CEZ(セファゾリン):セファメジン®:1g×3回/day

MSSAに対する1stチョイスです!

ペニシリンでは心もとなかったMSSAに対しても抜群に効くことで、GPC相手ならほぼ負けなしです。

さらに一部のGNRにもスペクトラムを持っています。
一部のGNRとは、大腸菌(E.coli)、クレブシエラ.ニューモニエ(K.pneumoniae)、プロテウス(Proteus mirabilis)の3つ。

ちょうど尿路感染症の起因菌と重なります。
頭文字を取ってPEKと覚えるみたいです。(僕はこの覚え方は好きではありませんが)

以上のスペクトラムをまとめると、カテーテル等のデバイス感染症、尿路感染症(単純性)、蜂窩織炎等の皮膚軟部組織感染症、心臓カテーテル検査術前投与に用います。

欠点として髄液移行性が悪いことが挙げられ、髄膜炎には使えません。
またCEZ耐性を持つメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSA)に対しても当然効きません。
ここは潔くバンコマイシンを使いましょう。
腸球菌に対しても無効です。

イメージ的には近接戦闘で威力を発揮するショットガンが合います。

長所短所
・MSSAに対して抜群に効く
・GPCにかなり効く
・尿路感染症、軟部組織感染症に対しても効く
・腸球菌には無効
・MRSAには無効
・髄膜炎には使えない

第2世代:
CMZ(セフメタゾール):セフメタゾン®:2g×2回/day
CTM(セフォチアム):パンスポリン®

第1世代に比べてグラム陰性桿菌をカバーしていますが、その分GPCに対しては弱くなっています。

GPCをカバーできる第1世代と、GNRをカバーできる第3世代で代替できるため、あえて第2世代を使う機会は減ってきている印象です。

特にCTMに関しては肺炎球菌の耐性化が進行し、より使いにくくなってしまいました。

一方CMZは嫌気性菌のカバーもあることから、下部消化管を対象とした術前投与や、軽い虫垂炎・胆道感染症に使用することがあります。

特にESBL産生菌に感受性があることから、上記疾患の起因菌がESBL産生菌の場合積極的に狙ってもいいかもしれません。

僕も病棟で見る場面として消化管の手術前投与が多いです。

イメージ的にはショットガンに連射機能を持たせたフルオートショットガンが合います。
不遇な立場も合わせるとよりピッタリなイメージです。

長所短所
・第一世代に加えてGNRをカバー。更にCMZは嫌気性菌もカバー
・CMZはESBL産生菌に感受性あり(の事が多い)
・消化管術前投与に使いやすい
・中途半端な立場(第1世代と第3世代で代用できる場面が多い)
・腸球菌には無効

第3世代:
CTRX(セフトリアキソン):ロセフィン ®:2g×1~2回/day
CTX(セフォタキシム):セフォタックス®:1g×3回/day

第3世代はCTRX、CTX、CAZが挙げられます。
ここではCTRX・CTXとCAZと分けます。
というのもCTRXやCTXと比べてCAZはかなり毛色が異なるからです。

まずCTRX・CTXからいきます。
イメージとしては第二世代に加えてGNRに対するカバーが強化されたものです。
その代わりにGPCに対するカバーが弱くなりましたが、例外的に肺炎球菌に対しては強い効果を示します。

そのため市中肺炎のエンピリック治療にかなり使いやすい薬です。

さらに髄液移行性が高いのも特徴です。そのため、細菌性髄膜炎に対するエンピリック治療にも用いられます。

GNRを大方カバーしているため、尿路感染症にも対応できます。

ありとあらゆる感染症をカバーしていることから重症感染症に対して良く使用され、ABPC/SBTと並んで病棟で良く目にする抗生剤なのではないでしょうか。

CTRXとCTXの大きな違いはCTRXが肝代謝で一日一回の投与で済む一方、CTXは腎代謝のため頻回投与が必要ということです。

外来に置いてある抗生剤の点滴はCTRXだけの筈です。
それは一日1回の点滴投与で済む薬がCTRXを置いて他に無いからです。

こう聞くとCTRXの方が良さそうに見えますが、CTRXには胆石を作りやすい副作用があるため、胆石や胆管炎、胆嚢炎の方には使えません。
また肝代謝であるため、当然肝機能障害がある方にも勧めにくいです。

非常に優秀な抗生剤である、CTRX・CTXですが、当然弱点もあります。

まず肺炎球菌を除いてGPCには弱いため皮膚・軟部組織感染症には適しません。
また嫌気性菌に対するカバーもないため、腹腔内感染症にもあまり使えません。
さらに緑膿菌に対してもカバーしないため、緑膿菌感染症にも使えません。

イメージ的には非常に取り回しやすいサブマシンガンが合うのではないでしょうか。

長所短所
・GNRと肺炎球菌をカバー
・髄液移行性がある
・CTRXは一日1回の投与で済む。そのため外来治療が可能
・肺炎球菌除くGPCに弱い
・嫌気性菌のカバーがない
・緑膿菌のカバーがない
・CTRXは胆石、胆管炎、胆嚢炎の既往がある方には使えない
・腸球菌には無効

第3世代:
CAZ(セフタジジム):モダシン®:2g×3回/day

CAZはCTRX・CTXの肺炎球菌に対するカバーを無くした分、緑膿菌に対するカバーを加えたものです。

市中肺炎には使えませんが、緑膿菌をターゲットとした感染症に使用します。

よって院内重症感染症に使用することが多いです。

GPCと嫌気性菌に効果を発揮するCLDM(クリンダマイシン):ダラシン®との併用は互いに弱点を補い合うため相性抜群です。俗にモダダラと呼ばれます。

イメージ的にはCTRXやCTXと似ているようで全く運用方法が異なる重機関銃的なマシンガンが合うでしょうか。

長所短所
・緑膿菌を含むGNRをカバー
・髄液移行性あり
・GPCのカバーがない
・嫌気性菌のカバーがない
・腸球菌には無効

第4世代:CFPM(セフェピム):マキシピーム:1g×3回 or 2g×2回/day

第1世代のCEZに第3世代のCTRXやCAZを加えたスペクトラムを持ちます。

広いスペクトラムを持つからと言って調子に乗って乱用してはいけません。
奥の手として限定的な使い方をします。

使用する時は感染症専門医に相談の上使用するようにしてください。

以下はその例です。
  1. 外すとマズイ、かつフォーカス不明の致命的な院内感染症
  2. 好中球減少時の発熱の初期治療
  3. 感受性ありのSPACEが検出された時
  4. 術後髄膜炎の治療
SPACEとは
院内感染症を引き起こすグラム陰性菌の代表的なものを頭文字で取ったものです。
S: Serratia セラチア
P: Pseudomonas 緑膿菌
A: Acinetobacter アシネトバクター
C: Citrobacter サイトロバクター
E: Enterobacter エンテロバクター

イメージ的にはロケットランチャーのような感じです。

長所短所
・第1世代+第3世代のスペクトラム
・緑膿菌もカバー
・髄液移行性あり
・嫌気性菌のカバーがない
・腸球菌には無効

カルバペネム系

カルバペネム系は数多く存在する抗生剤の中でも最も広いスペクトラムを持ち、抗生剤の王と呼べる存在です。

多くのGPC、GNR、嫌気性菌に加えて緑膿菌やESBL産生菌に対しても有効です。

カルバペネム系の抗生剤は数種類ありますが、とりあえずメロペンだけ抑えておけば大丈夫だと思います。

MEPM(メロペネム):メロペン®

殆どの場合で奥の手的に使用します。

例として他の抗生剤で無効な耐性菌が原因の重症な医療感染症に使いますが、その他の使用用途につきましては、敢えて今回は書きません。
必ず清書を読んで勉強してから使うようにしてください。

また使うにしても感染症専門医と相談の上使うようにしてください。

効かない菌の方が少ないような超広域なスペクトラムを持つため、効かない菌を優先して覚えるようにします。

効かない菌の代表は

腸球菌、Clostridium.difficile、MRSA、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)、マイコバクテリア、クラミジア、マイコプラズマ、レジオネラ、リケッチア等です。

イメージとしてはもはや銃火器というカテゴリを超えて絨毯爆撃のような感じです。

逆に言えば絨毯爆撃に耐える菌はエイリアンのような超生命体です。
そんな菌が繁殖することになれば、たちまち人類は絶滅してしまうでしょう。
何度も言うようですが、使う時は慎重に。

長所短所
・超広域スペクトラム
・緑膿菌やESBL産生菌もカバー
・髄液移行性あり
・腸球菌には無効
・Clostridium.difficileに無効
・MRSA、VREといった耐性菌に無効
・レジオネラに無効
・マイコバクテリア、クラミジア、マイコプラズマ、リケッチア等にも無効

まとめ

前編と称して今回は抗生剤から見た使い方で簡単にまとめてみました。

ただしあくまで「簡単に」ということに注意してください。

用量についてもあくまで一般的な用量で、特殊な感染症や腎機能障害等で当然変わっていきます。

必ず添付文書や清書を読むなり確認し、勉強してから使うようにしてください。
参考書もいくつか紹介したいと思います。
  1. 感染症レジデントマニュアル
  2. 感染症プラチナマニュアル
  3. 抗菌薬の考え方・使い方 Ver.3
  4. サンフォード感染症治療ガイド
等はオススメの参考書です。

 

抗菌薬含めて医薬品は使ってみて初めて使い方が分かってくるものだと思います。
この記事は研修1年目に書いたものですが、2年目の僕から見てかなり内容が浅かったり、偏りがあったため、大幅に加筆修正するに至りました。

更に気づいた事は、ブログの言い回しが上手くなったという事です。

ブログを継続していく大事さや、勉強を続ける大事さが身に沁みました。

軽い内容ですが参考になれば幸いです。

 

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地方の大学病院に勤務する2年目のヤバレジ。曲をつながたり、お絵描きしたり、デザインしたり、ヘッドホンのレビューを書いたり、ダーツしたりすることが趣味です。あと勿論ブログも。カオスでまとまりのない事を書きますが生暖かい目で見守ってくれると嬉しいです。